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なで肩とは一体何でしょうか?

恩師より、なで肩はピアノ演奏に支障がある。なで肩の弟子を取らないピアニストもいる、と言われたことがあります。
そもそも、なで肩とは何でしょう。前肩との違いはあるのでしょうか。腕を動かしにくいなど支障があるのでしょうか。改善方法はありますでしょうか。筋トレ、姿勢への意識などで。

なで肩とはあくまで”見た目”であり、正式な診断名ではありません。
なで肩を理解する上において、「肋骨(=胸郭)は丸い」ということが基本となります。
丸い骨(肋骨)の上に平らな骨(肩甲骨)が載っているだけなので、面と面が密着することはありません。そのため肩甲骨は元来とても不安定なのです。
しかも、肩甲骨をしっかりと留めてくれる関節は存在せず、鎖骨(さこつ)ただ1本で”吊り下げられて”いるだけなので、なおのこと不安定となります。
そしてさらに、体重の6%を占める腕が、肩甲骨にだけつながっているので、足場のない不安定な肩甲骨の負担がさらに増えることとなります。
これらの複合的な理由から、肩甲骨をしかるべき場所に留めておくことは難しいことなのです、にも関わらず、2足歩行となった人間は、どうにかして肩甲骨を留めて、腕を使える状態に保たなくてはなりません。これは困った。

そこで使われるのが”筋肉”となるのですが、その筋肉は、ピアノを弾いている時間はもちろん、それ以外の時間も「腕全体を吊り下げ保ち続ける」必要があります。
その吊り下げ保ち続けることが難しくなった場合、肩甲骨が”丸い”肋骨の上を滑り落ち、なで肩の見た目となります。この滑り落ちる状態は、”前肩“の見た目にもつながってまいります。

さて、なで肩や前肩の状態は、ピアノの演奏にどのような影響が及ぶのでしょうか。
それらの状態は、丸い肋骨の上において、肩甲骨が非常に偏った場所に固定され続けることです。
ピアノを弾く腕は、唯一の土台として肩甲骨に頼っています。その頼っている肩甲骨が、下や前の方にずれて偏った場所にあると、腕の動きは制限されやすくなります。
そうなりますと、広い範囲の鍵盤を弾き分けにくくなるために、腕全体の筋肉が必要以上に頑張らなくといけませんので、肩から腕にかけての力みが出てきてしまいます。また同時に、肩甲骨を吊り下げている筋肉も働きつづけるために、頭や腰の滑らかな動きがしづらくなります。その結果、音楽の表現力が非常に制限されることとなるでしょう。

それでは、何を意識すればよいのでしょうか。

それは、肩甲骨が全ての方向に動ける事です。上-下はもちろん、内-外や回転すらも含まれます。丸い肋骨の上で平らな肩甲骨が、あたかもスケートをするかのように全ての方向に滑らかに動ける状態を保つことです。
これは単なるリラックスや脱力の意識では手に入れることができません。ピアノを弾いていない姿勢で、後ろから誰かに手のひらで肩甲骨に触れてもらい、自分で動かせる範囲で肩甲骨を縦横無尽に動かしてみてください。手のひらで触ってもらっていると、「肩甲骨ってこんなに動くんだ!」と改めて感じることが出来る事でしょう。

そしてさらに知りたい場合には、肩甲骨にくっついている筋肉を調べてみてください。そして、その筋肉の反対側が、どの骨にくっついているのかを調べてください。
筋肉は短くなることが仕事なので、「肩甲骨を動かす」のではなく、「肩甲骨を、反対側のくっついている方向に動かす」という事実が解ります。繰り返しになりますが、肩甲骨は動きません。肩甲骨につながっている筋肉が、反対側にくっついている方向に動かす結果、肩甲骨は動かされるのです。

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