about Elizabeth Norberg-Schulz

日本へ滞在された時の印象は?

ミラノ・スカラ座とフランス国立管弦楽団と共に演奏旅行で来日しました。スタッフの方々のプロフェッショナルな仕事ぶり、そして観客の皆様が私をとてもあたたく迎えてくださり、私のCDを持った多くの方が劇場まで来られていたのが印象に残っています。公演後はタクシーの中が一杯になるほどたくさんのプレゼントを頂き、ハリウッドスターになったような気分でした(笑)。
日本文化にもとても興味がありますし、イタリアでも日本人声楽生にレッスンをしていますので、日本とのつながりは強く感じて

日本でのマスタークラス参加希望者へ
体にもそして頭にも残っていくのが私のレッスンの特徴です。短期間で出来る事には限界がありますが、各歌手の持つ問題点を明確にし、それを解決する方法を見つけることは可能だと思います。
私のオペラ歌手そして指導者としての経験が、皆様のお役に立ち、さらなる飛躍の切っ掛けになれれば幸いです。一人一人と向き合いながら勉強できることを大変楽しみにしています。どんな些細なことでも遠慮なく怖がらず(笑)聞いて下さい。
そして歌を愛し、好奇心をもって常に勉強してください。

勉強の課程で影響を受けたマエストロたちは?

13、4歳のころに父親がプレゼントしてくれたイタリアオペラのレコード(レナータ・テバルディ、リチア・アルバネーゼ、クラウディア・ムツィオ、マグダ・オリヴェ―ロ、マリア・カニリア、マリア・カラス、アンナ・モッファ、ミレッラ・フレーニなど)を毎午後聴いていましたね。エリザベス・シュワルツコップと行った4年間にわたる定期的なレッスンは、私がさらに音楽家として成長する機会となりました。演練されたドイツリートの勉強もですが、カラヤン、フルトヴェングラー、リヒャルト・シュトラウスから彼女が学んだことも教えていただきました。

世界中の著名な指揮者と共演されていますが、特に印象に残ったエピソードはありますか?

そうですね、どの指揮者とも素晴らしい思い出があるのですが、特に印象に残っているのがクラウディオ・アッバード氏との共演でしょうか。
当時、ザルツブルグの復活祭音楽祭のゲオルク・ショㇽティ指揮、ベルリン・フィルハーモニー交響楽団の『ファルスタッフ』にナンネッタ役で呼ばれており、ちょうど同じ時に、ウィーン・フィルハーモニー交響楽団とブラームスの『レクイエム』のために滞在中のアッバード氏から「予定していたソプラノ(とても有名な方でした)が体調不良で出演できなくなってしまったので、君にお願いしたい」と声をかけていただきました。
たった1度の合わせで『レクイエム』を『ファルスタッフ』の2日後に歌うという(今考えると恐ろしいですが)、ハードなプログラムそして精神的な面で少し不安はありました。
アッバード氏とこのような急な共演ですよ!
しかし、サンタ・チェチリア音楽院での勉強、プライベートでの素晴らしい指導者と長年にわたるレッスンから得たものに確信があった私は、アッバード氏の依頼をお受けしたわけです。

『レクイエム』のソプラノ・ソリストの人選は、その演奏全体の出来を大きく左右します。
短時間の合わせでしたが、アッバード氏から音楽面でも精神面でも非常に支えられ本番を迎えることができました。
今でも劇場の観客、関係者、評論家の目が急遽代役として登った私に注がれていたのはよく覚えています。そしてその後、また新たな扉が開いたことで、どこにどういう出会いがあるかわからないものだと思い、今まで以上にいろいろな機会を大切にするようになりましたね。

イタリアで声に資質がある学生と数多く出会う機会があると思いますが、資質の利点と障害は?

声に資質ある学生が、歌の勉強課程で出会う数々の課題を容易に乗り越える様子を幾度となく見てきました。しかし、この『資質』からくる『容易さ』が勤勉さ、情熱、我慢、熱心な研究、勉強を妨げる結果となるのも見てきました。
資質ある若いオペラ歌手が早く名をあげたいばかりに、声に合わない役でさえ受け入れ、その結果、声帯を壊してしまったという光景は数多く見られます。どの分野でもそうですが、一つ一つ層を重ねていくように真摯に勉強することはとても大切なことです。
声に資質がない生徒でも、歌への思い、勤勉さを持つことで、時間はかかるかもしれませんが、信用がおけ、自分の価値に自信と長いキャリアが保証されたオペラ歌手になれることは言うまでもありません。

ベルカントについてですが、特殊なテクニックが存在するのか、それとも歌い方のモデルの一つとして扱われるのでしょうか?

一言で答えるのは難しいですね。この質問からは複数の回答が考えられます。ベルカントの歴史は、当時の歌手、作曲家が残した様々な論文から見ることができます。例えば、歌手であり作曲者でもあったジュリオ・カッチー二著『新しい音楽(1601)』『新しい音楽とその書法(1614)』などから当時のポリフォニーからモノディーへと声楽様式の変遷、そして言葉の重要性、感情の動きを際立たせ、ベルカントの特徴でもあるニュアンスに富む歌い方、母音唱法基礎を置く装飾的な歌い方が要求されるようになってきたことがわかります。
そしてピエルフランチェスコ・トージ著『古今の歌手たちの見解(1723)』もソプラノを指導する者の所見、声一般について、レジストロなど、そして演奏法について考察するうえで重要な資料の一つです。
ベルカントについては、オペラ史、メロドラマ、劇場の発展、ベッリーニ、ドニゼッティ、ロッシーニなど数多くの事にふれながら説明したいのですが、ここではとても長くなってしまいますね(笑)。いずれにせよ、テノール歌手を父に持ち、自身もバリトン歌手でパリ音楽院の教師を務めていたマヌエル・ガルシアjr(喉頭鏡の発明者でもある)が、カストラートによって高められたアジリタ、長いフレーズを一息でそして安定した滑らかさで歌う技巧を受け継いだイタリア・ベルカントを広めていったのです。
ここからCantare sul fiato息の上で歌うという語彙も出てきました。
当時の記事にイタリア・ベルカントは確実な音程、完璧に様々な感情を表現する、つまり、最も美しく卓越した方法だと書かれているからです。

アスリートのような準備を要求されるオペラ歌手ですが、、、

歌手として指導者として音声、発声生理学を勉強しています。
確かに、頭蓋腔、口腔、共鳴、顔の筋肉、舌、口蓋、喉頭、咽頭、肋間回りの筋層、横隔膜、背骨、骨盤底筋など歌うために多種多様の筋肉、器官が働いているのは明らかですが、それ以上に私たちは、息の芸術を極めなければならないでしょう。
息をどのように使うかが理解できれば、声も自由になり、表現力はさらに豊かになるはずです。
オペラ歌手がなぜアスリートかというと、一つの音を歌うときに実は100の筋肉が同時に働いているのですよ!
一本のオペラを歌うときを想像してください。
アスリ―トのような準備が必要ですよね。

オペラ歌手と教師、両立の難しさと利点は?

個人的な意見ですが、数多くの舞台経験後に声楽教師を始めたほうが良いと考えています。
なぜなら、指導者はたくさんの舞台上のテクニック、要領などを知る必要性があるからです。
ですが、素晴らしい歌手が素晴らしい指導者であるかというと、そうでない場合もあります。声に資質があるために、あらゆることがいとも容易くできてしまう場合があるので。問題を解決するために苦労し時間をかけ、真摯に勉強を続け地位を築いた歌手が、良い指導者になる場合も多々あります。経験を積んだ指導者は、発声のテクニックだけではなく、レパートリー研究、音楽史、演奏家歴史、作品スタイルなど好奇心と愛を持って歌と向き合うよう導いていくでしょう。
しばしば起こる事ですが、各生徒がもつ個性に向き合うことなく、指導者が自分自身を生徒の中に投射してしまい、指導者が思う音楽、声などに答えるため、生徒本人が感じる、考える力、探す能力が育たない傾向には考えさせられます。
指導者と生徒の相互信頼関係はとても大事です。指導する私たちも責任はありますが、生徒側も決して受け身にならず、自分の感性、体の感覚を信じて指導者と向き合っていくことも大事です。

オペラと遠い文化を持つ様々な国の若い音楽家、声楽生がたくさん見られますが?

毎日、世界のどこかでオペラ公演が行われるほど浸透した私たちの文化に興味をもって頂けるのは大変喜ばしいことです。
魂の動きを表現した言葉、詩が音楽と一緒になったものが歌です。
シンタックス、同意語のニュアンス、言い回しが語彙に生彩を与え、様々な表現を可能にする言葉は各民族のアイデンティティを表すものですよね。
言葉に重み、味わいを与えたい思いから生まれたのがオペラです。長音で言葉を引き伸ばす、音程の跳躍、アジリタ、テヌート、同一音のリピートなど様々な作曲技法は言葉から得るニュアンス、感情と一致しているのです。
ラテン・ゲルマン文化に類似しない言語文化は、メンタリティーも異なり、言葉での感情表現にも違いがあります。繊細な言葉遣い、色彩、そこから引き出す表現を声と共に行ううえで、すべてを理解するのは容易ではありません。
発声テクニックだけではなく、イタリア語、イタリアそしてヨーロッパの文化、慣習、伝統などを学ぶことも非常に大事だと常に思っています。

お名前は伏せて、活躍しているオペラ歌手達もあなたの下へレッスンまたはアドバイスを受けに来られていますが、どのような問題が多く見られますか?

息のコントロール!!ですね。
これが、音程の不安定さ、発音の悪さ、喉が上がる、不自然なビブラート、羊のような声、鼻にかかった音、統一感のない音、小さな高音、後ろへ響く高音など欠点の原因となり、のちに、ポリープや失声と繫がっていくのです。

声楽を勉強する学生へのアドバイスは?

パッションをもって音楽を愛し、謙虚さをもって勉強、勉強、勉強して下さい(笑)
決して慌てず、時間をかけて下さい。本物の音楽家は何歳になっても舞台に呼ばれますし、長いキャリアを築くことができます。
そしてイタリア語も学んでくださいね。

声楽マスタークラス in Tokyo 2017の様子(BLOG)
https://lemuse.or.jp/archives/category/masterclass/masterclass-elizabeth-2017

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