手のひらのアーチと指先で鍵盤をつかむような働きは連動していますか?
- 実際に演奏する際、手のひらのアーチを保つためには、指先で鍵盤をつかむような働きが重要かと思うのですが、この2つの働きは連動するものかと思うのですが、この認識は合っていますか?
だとすると、指先(=末節骨)には曲げる(=鍵盤をつかむ)ために専用の筋肉(=深指屈筋)がついているとのことでしたが、特にこの筋肉を養うため、(あるいは、この筋肉に対する意識を養うため)に役立つ、具体的なワークのようなものはありますか? -
ご認識は合っています。
指先で鍵盤をつかむ働きをする筋肉は、爪の部分の骨=末節骨(まっせつこつ)を手のひら側に曲げますが、その他の機能として
・指の全ての関節を曲げる
・手首を曲げる
上記2つの機能も併せ持っています。
つまり、先端=末節骨を曲げようとすると、手のひらが自動的にアーチをつくるように、人間の手のひらはなっています。
また一方で、手首を反らせると、上記の働きをする筋肉が結果的に伸ばされる形になるので、その長さを一定に保つために、自動的に指が曲がります。これもアーチをつくる自然な身体のつくりです。これを「テノデーシス効果」といいますので、調べてみてください。次に、深指屈筋の機能を高めるワークについてです。
ピアニストにおける指の機能は、いわゆる力強さが求められるものではなく、正確性が求められます。この正確性は「巧緻性(こうちせい)」と称されるもので、いかに正確に緻密に動かせるかが、ピアニストにとって大切です。では、この巧緻動作はどのように訓練するのでしょうか。
巧緻動作は脳と密接に関連します。
・どれくらいの速さで関節が動いたか
・どれくらいの距離を関節は動いたか
・どれくらいの張力が靱帯にかかっているのか
・どれくらいの圧力が(鍵盤から)皮膚にかかっているのか
・その結果どのような音が鳴っているのか etc.
脳はこれらを超々高速で演算して、脳は指を動かしています。
つまり、速く正確に動かす=巧緻性を高めるには、動かした結果を知る=フィードバックも大切だということになります。すでに指のストレッチや筋トレには取り組んでおられると存じますので、新しく始められるのであれば、それらの巧緻性を高める練習が良いかと思われます。
例えば指先だけでさまざまな素材や形状のものをつまんだり、表面の素材感を触り別けたりすると、指先の弁別能力(=違いを見抜く)は高められます。
また、神経は温められると性能が高まりますので、難曲の前には、温まったカイロの上に指の腹を当てたまま、グネグネと前後左右に動かすなど、鍵盤に触れる前に予め性能を上げておくこともよいかもしれませんね。