ヘーリングの模型について現代における信憑性について
- 横隔膜に感覚神経があるかどうか→横隔膜の挙動を自身で知覚する術があるかどうか、または知覚する方法について
そしてヘーリングの模型について現代における信憑性と山本先生のお考えをお聞きしたいです。 -
横隔膜には感覚神経はありませんので、自覚することはできません。
その一方で、普段の吸気は、その70%もの仕事を横隔膜が受け持っているので、息を吸ったときに「どこが動いたと感じたのか」「どこが張ったように感じたのか」の70%は横隔膜の動きと”読み替える”ことが出来ます。
いずれにせよ、吸気は横隔膜だけで行われるものではないため、上半身全体での変化を感じ取ることが呼吸には大切です。へーリングの模型については、空間の大きさの比率が誤解を生じさせます。
物理学の概念を模したこちらの模型は、横隔膜の下降に伴う陰圧の増加を的確に表しています。
しかしながら、胸腔の空間の大きさは非常に不正確に表されています。ここに腹式呼吸(横隔膜呼吸)の大きな誤解を生じさせる原因があります。
このモデルでは、
A:内側の風船は肺を、B:外側のペットボトルは胸郭を、C:底の膜は横隔膜をそれぞれ示しています。
B:ペットボトルの内側の空間は密閉されているので、C:底の膜が下がれば空間が拡がり、ボイルの法則により陰圧となり、ペットボトルの外側の空間につながっているA:内側の風船が膨らむというのが、この模型によって示される物理学です。
ところが、実際の人体においては、B:ペットボトルの内側の面とA:内側の風船の外側の面でつくられる空間は極端に狭いのです。模型のように広大な空間では決してありません。
だからこそ、C:底の膜=横隔膜が「ほんのわずかしか下がら」なくても、B:ペットボトルの内側の面とA:内側の風船の外側の面との間の空間の大きさが「拡大する比率が高くなる」ので、A:内側の風船が膨らむ=吸気が行われるとなります。
イメージとリアルを分けて理解する必要がある、代表的な模型ですね。